「Hello! インディー」第4回 開発者が語る『Celeste』の秘密。ゲーム設計のこだわりと、「コヨーテタイム」!?

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Hello(ハロー)!BOKUです。

今回は、『Celeste』の開発者の方々にお話を聞きました。
さっそく行ってみましょう!

制作者に聞いてみよう

今回は、『Celeste』の デベロッパー 「Matt Makes Games」の Matt(マット)さんと Noel(ノエル)さんに聞きました。

Matt Makes Games:その名前の通り、マットさんがゲームを作る会社。カナダのバンクーバーに拠点を置く。『Celeste』は、マットさんとノエルさんを含めた主に6名で開発されたとのこと。

左がマットさんのデスクで、右がノエルさんのデスク。猫を飼っているんですね。

『Celeste』のスタートはたった4日間

マットさん、ノエルさん、よろしくお願いします。まずは、『Celeste』を作ることになったきっかけを教えてください。

始まりは、僕たちがルームメイトだったころに、遊びでゲーム開発をしたことですね。4日間で何が作れるのかをゲームジャム(※1)のようにチャレンジしてみたんです。そこでできあがったのが最初の『Celeste』です。と言っても、当時は『エベレスト』という名前だったんですけど。これは、『Celeste Classic(セレステクラシック)』として今もホームページで公開していますし、Nintendo Switchの『Celeste』の中でもプレイできます。

※1 ゲームジャム:決まった時間内でゲームを開発するイベントのこと。4~6人くらいのメンバーで、24~48時間くらいで行うことが多い。メンバーもテーマも前もって知らされないことがほとんど。時間が限られているからこそ、新しいアイディアのゲームが生まれやすいという一面も。

その後、このプロジェクトを大きくしていって、今の『Celeste』になるわけです。Celeste(セレステ)という名前の山がカナダにあるんです。そこから名前だけをお借りしました。

4日間で作られた最初の『Celeste』は、ゲーム内のどこかで見つけてプレイすることができます。すでに現在の『Celeste』の要素がほぼできていることに驚きです。

エベレストからセレステになったんですか。(プロジェクトは大きくなってるけど、山は小さくなってるんじゃ……)

行ったことも見たこともない山なんですけどね。

見たこともないんですか!?ゲーム内のセレステマウンテンのモデルになったのかと思いました……。

ゲーム内のセレステマウンテンは、実在するセレステ山とは無関係だそうです。セレステ山を調べてみましたが似てませんでした。

ハードコアなゲーム=山登り!?

そもそも、山を登るというテーマにしたのはなぜでしょうか?

もともとハードコアなプラットフォームゲームをつくりたかったんです。で、ハードコアなゲームをプレイするのって、山を登るのに似てるなあって思ったんですよね。「なぜ人は山に登るのか」と「なぜ人はハードコアなゲームをするのか」って、似てません?

そう言われると…似てるような気が…しなくもないような……。

バンクーバーに山が多くて、身近だということにも影響されていますね。僕も山登りやロッククライミングをしますし。

壁にしがみついて登るというアクションは、ロッククライミングにヒントを得たとのこと。

こだわり抜いたストーリー

このゲームのこだわりポイントはありますか?

ストーリーですね。書き上げるのにかなり苦労した思い出があります。
ゲーム内に悪役を作りたくなかったんですよね。それで、主人公のMadeline(マデリン)が自分の中の闇と闘い、それを乗り越えていくという、内面と戦うストーリーにしました。

どこか闇をかかえるMadeline。セレステマウンテンを登る中で、自分の内面に向き合っていきます。

ボクもプレイしていく中で、どんどんストーリーに引き込まれていきました。個性豊かなキャラクターたちも魅力的で。特に大城さん。モデルがいるなら会ってみたいです。

それぞれのキャラクターにモデルがいるわけではないんですが、何人もの知り合いを組み合わせて1人のキャラクターにしましたね。

そういえば、ゲーム内に登場するセオのインスタグラムが実在していてビックリしました!

よく見つけましたね!しかも、ちょっとずつ更新をしてるんですよ。

「InstaPix」に夢中なセオ。ゲーム内で一緒に自撮りした写真も、実在するインスタグラムに!

テストプレイの繰り返しで「できそう」なエリアに

ゲームをプレイしていて、まるでボクの動きを予知していたかのような絶妙なしかけの配置に、何度もやられていました。どのように作り上げたんでしょうか?

友人に協力してもらって、テストプレイを繰り返しましたね。テストしてもらって配置のよくないしかけが見つかったら、すぐに直して、またすぐにテストしてもらって……と。特に、チャプター6のボス戦とチャプター3のホテルは、かなりの回数のテストと作り直しを繰り返しました。作ったものの、最終的にゲームには組み込まれなかったものが何百とあります。

どのエリアも「できそう」に感じたので、途中で挫折することなく何回もチャレンジし続けていました。何百ものテストと作り直しがあってこそ、この絶妙なバランスが生まれたんですね。

そうですね。あと、実はほかにもカラクリがあります。例えば、難しいアクションが必要なエリアは、攻略方法が簡単にわかるようにしています。そうしないと、「できなさそう」だと思ってしまいますからね。逆に、簡単なエリアを難しそうに見せて、「できた!」という達成感を味わってもらえるようにもしています。

なんと!!ボク、まんまと術中にはまっていました……。

攻略方法や実行するべきアクションはすぐにわかったのですが、クリアするのに何十回も失敗したこのエリア。すべては設計されたものだったなんて……!

不自然な「コヨーテタイム」による、自然に感じる操作

 ほかにも設計のコツとかはありますか?

1つ1つのエリアを短くして、失敗してもその場からすぐに再スタートできるようにしていますね。失敗から再スタートまでの時間をなるべく短く、さらに失敗地点のなるべく近くから再スタートできるように。
あとは、プレイヤーが理不尽に感じないような設計を心がけています。

それ!ものすごく感じました!すべてのエリアで何回も失敗するんですけど、それがまったく理不尽ではなくて。「ゲームのせい」ではなく「自分のせい」だと感じるんで、イライラしないんですよね。

そのために、操作性についても細かな工夫をしていて、キャラクターが進んでいて地面がなくなった直後にジャンプボタンを押しても、ジャンプできるようにしてあります。

えっ!?空中でジャンプできるってことですか?

その通りです。そうすることで、プレイヤーに「思い通りに操作できた」と感じてもらえるんですよ。この「本当は落ちてるんだけどジャンプできる少しの間」のことは「コヨーテタイム」と呼ばれています。アニメで、コヨーテなどのキャラクターが走って崖から飛び出したとき、しばらく空中に浮いてから落ちるシーンがありますよね。あの間のことです。

実際に試してみました。よく見ると……空中からジャンプしていますね!!これが「コヨーテタイム」。

こういったハードコアなゲームって、プレイヤーが挫折しやすいと思っています。なので、そうなってしまわないような工夫を凝らしています。

本当は空中でジャンプできる方が不自然なのに、「コヨーテタイム」を作ることでプレイヤーは自然に操作できていると感じるんですね。人間の感覚って不思議。

みなさんへのメッセージ

最後に、日本のみなさんにメッセージをお願いします。

 『Celeste』は、我々にとっては初めてグローバルに発売したタイトルです。『スーパーマリオブラザーズ3』などの日本のゲームや、ジブリなどの日本のアニメの影響を多く受けていますので、日本のみなさんにも楽しんでいただけたら嬉しいです。

マットさん、ノエルさん、ありがとうございました!

それではみなさん、よいインディーライフを!

主人公Madelineの開発資料を見せていただきました!ドット絵に目があるバージョンもあったんですね。

Copyright © Matt Makes Games Inc. 2018

edited by : SOEJIMA・BOKU
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