「Hello! インディー」なぜマシュマロを焼くのか? 『Outer Wilds』開発者インタビュー。

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22分後に消滅する太陽系が舞台の探索アドベンチャー『Outer Wilds』。

「消滅までの22分間」を繰り返していくなかで、惑星を探索し、高度な文明を持つ種族の足跡をたどる――そんな本作について、開発者である「Alex(アレックス)」さんに開発の経緯やこだわりについて伺いました。

『Outer Wilds』のゲーム内容については、こちらの記事をご覧ください。

好奇心の赴くままに22分間の宇宙旅行を楽しんでください

Alex Beachumさんのプロフィール
アメリカのゲーム開発会社 Mobius Digitalに所属する本作のクリエイティブディレクター。ゲームデザインやストーリーデザインのほか、一部プログラミングなども担当している。南カリフォルニア大学の芸術学部卒。

Alexさん、こんにちは。
さっそくですが、本作はAlexさんが大学生の時にゲームについて学んでいた内容が制作のきっかけになったとお聞きしました。

そうなんです。在学中の修士論文として「これまでにない独自の方法で、インタラクティブな体験を作る」というテーマが与えられており、それに向けてゲームを開発していました。
そこで、ゲームデザインの要となったのが次の2つでした。
1つ目は、ゲーム中によくあるクエストの発生地点や収集要素を示すマーカーのような、いわゆる「外的な動機づけ」ではなく、純粋な好奇心から生まれる「内的な動機づけ」によってプレイヤーに動いてもらいたいということ。
2つ目は、時間経過によって大規模かつ不可逆的に変化するゲーム世界を作り出すことです。

つまり……プレイヤーが好きなように探索ができて、さらに時間と共に世界がどんどん変わっていく、ということでしょうか?

はい。当時遊んでいたゲームは、決められた一本道を進むものが多かったため、プレイヤーを無理に導いていくのではなく、自然と湧き上がる好奇心を大切にするゲームを作りたいという野望を持っていました。
そんな思いから生まれたのが『Outer Wilds』で、みなさんご存じのとおり「宇宙探索」に多大な影響を受けています。人類は宇宙を旅する必要がなくても、宇宙船を造ってまで冒険に出てしまうような生き物なんですよ。つまり、そこには人類の好奇心を掻き立てる魅力があるんですよね。

宇宙を旅したい、という人類のロマンこそがゲームの出発点だったのですね。

ええ。なので本作では、プレイヤーの好奇心というものを大事にしています。ただプレイヤーに目標地点やクエストを提供するのではなく、疑問を投げかけ、探索を通じてその答えを選び出せるようにしているんです。
たとえば、惑星・脆い空洞(Brittle Hollow)の北極では、プレイヤーは太古に滅びたエイリアンの文明であるノマイが残した文章を見つけられます。それは惑星・砂時計の双子星(Hourglass Twins)にある研究所で行われた、物理学を超越している驚くべき結果が出た研究に関するものとなっています。ノマイがいったい何を発見したのかが気になるプレイヤーは双子星に行ってその研究所を調べられますし、それを無視してほかの場所に行ってもいいわけで、判断は完全にプレイヤーにゆだねられています。

脆い空洞は地表や地下に遺跡やメッセージが残されている。

燃え盛る双子星にある「太陽なき街」のどこかから研究所に行ける。

本作は「22分後に、太陽系が消滅する」という点も大きな魅力のひとつですね。

これは冒頭に挙げた2つ目の要である「時間による大きな変化」を考えたときに浮かんだアイデアでした。世界をダイナミックに変化させ、それを何度も体験する楽しさを作りたいと思い、タイムループするゲームにしようと決めました。そもそも22分後に世界が滅びるようにした理由は、時間の経過とともに各惑星に取り返しのつかない変化をもたらしたかったからなのです。
たとえば、22分間で脆い空洞はバラバラに壊れていきますから、どこかで時計を一度リセットする方法が必要なので、消滅を利用しています。
もうひとつは、ゲームが長時間続くことで、物理シミュレーションプログラムの動作が不安定になるのを避けたかったという事情もあります。

なるほど。時間経過をリセットするだけでなく、ゲームの安定のためという目的もあったとは、興味深いです。

ちなみに、動作のテストをしている時は、デバッグ機能であちこちに一瞬でワープしていましたから、プレイヤーはゲーム内で歩いたり宇宙船で移動したりするぶん、時間の制限があることを常に忘れないようにするのも課題でしたね。これも頻繁なテストプレイが欠かせない理由です!

ところで、本作の印象的なシーンの1つに、ベースキャンプのマシュマロ焼きが挙げられるかと思いますが、どういう理由で入れたのでしょうか?

これは、ほかの多くの宇宙アドベンチャー作品に見られる「冷たい雰囲気」を避けたかったためですね。焚き火を囲んでマシュマロを焼くことで、ゲームの中に、ある種の温かみを出したかったのです。ゲームの大部分は自然の力により刻一刻と崩壊していきますが、焚き火のマシュマロは自らがコントロールできる小さな瞬間なのです。

世界の終焉が迫るなか、焚き火にあたるのはのんびりできる唯一の時間かもしれない。

このシーンを制作した目的は、混沌に満ちた自然の力が働く世界において、プレイヤーに静かなひと時を過ごしてもらうことでした。そのため、必要以上に複雑な操作は必要ないとはいえ、最低限の操作感を得られるものは用意したかったのです。
なお、焚火の描写については、ほかのゲームに良くあるようなファンタジー感のあるものではなく、実際にキャンプファイヤーをしているかのように感じられるビジュアルを実現するために、アートディレクターのWesley氏が全力を尽くしてくれました。

Alexさんは以前、よく旅をされていたんですよね。

ええ。マシュマロを焼くシーンは、ハイキングとバックパッカーとしての旅の経験から着想を得ました。特に夜はキャンプファイヤーのかたわらで星々を見上げながら「地球のほかにいったいどんな世界があるのだろう」と思いをはせたので、そんな感情から生まれていますね。

それでは最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。

どうぞ、好奇心をもって旅を楽しんでください。そして、宇宙船のオートパイロットを信用しないように!

Alexさん、ありがとうございました。
最後に本作のイメージイラストをご提供いただきましたのでいくつかご紹介します。

繰り返す22分の体験を通して、謎解きやサバイバルだけではなく、宇宙の不思議やロマンも存分に味わうことができる『Outer Wilds』は現在配信中です。

それではみなさん、よいインディーライフを!

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    edited by : Indie World 担当
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