Hello!BOKUです。
映画などで、登場人物の気持ちに入り込んでしまうことはありませんか?
今回紹介する『Florence』は、インタラクティブな体験を活かしてグッとその世界に入り込ませてくれる、そんなゲームです。
※ストーリーのネタバレが含まれます。なるべく序盤のシーンに留めていますが、すでに気になっている方は、プレイしてから読みに戻ってきてくださいね。
フローレンスの半生を体験
主人公は、「フローレンス」という女性。どこか物足りない人生を送っている彼女の半生が、絵本や漫画を読んでいるように進んでいきます。
その中で、フローレンスの生活や出来事を、実際に手を動かして体験していくのが、このゲームの特徴であり最大の魅力です。
たとえば、歯を磨くときは、自分で歯ブラシをシャカシャカと動かします。
通勤電車の中では、友人のSNSの投稿に対して反応します。
夕飯のお寿司を、どのような順番で食べるかを考えて、食べていきます。
……ちょっと面倒くさそうですか?
ボクも、序盤はそう思っていました。そして、フローレンスの生活が退屈なんだから、それを体験している自分も退屈なのは仕方ないと、少し冷めた気持ちでプレイしていました。
でも、すべての体験に意味があったんです。
ある日、フローレンスは、街で聞こえてきた美しい音楽に引き込まれます。それは、チェリストを夢見る「クリシュ」という男性が奏でるチェロの音色でした。
ここから、フローレンスの人生が変わってきます。それまでは灰色だった世界にも、色が生まれました。
クリシュとの初デート。吹き出し型のパズルを作ることで、会話を進めていきます。
最初は、ピースが多くて大変……。そういえば、慣れない人との会話って、ひとつひとつ言葉を探しながらそれを組み立てて慎重に話すから、その感覚に似てるなあ。そんなことを考えながら、言葉のピースをはめていきます。
その後、デートを重ねるにつれて、パズルが徐々に簡単になってきました。そう、スムーズに言葉が出てくるようになってきたのです!
いつの間にか、パズルをしているのではなくて、完全に言葉を探している感覚になっていました。そして、客観的に物語を見ていたはずが、フローレンスの視点から見ていたんです。
このあたりから、ボクは「フローレンス体験」にハマっていきます。
もうひとつ、どっぷりと入り込ませてくれたのが、同居を始めるシーン。
フローレンスが住む家にクリシュが引っ越してくるんですが、キッチンやリビングの棚にはすでに物がびっしり。彼の物を並べるには、自分の物をしまわないといけません。
「コーヒーは飲みたいだろうから、お鍋を1つしまって、スペースを空けてあげよう」「こんな変な置物持ってきて……。本当にいるの!?」と、相手のことを考えながら並べていきます。持ち物から新たに知る彼の人間性も、なんだか新鮮で楽しい。
自分だけの空間から、2人の空間へ。相手のために譲るという思いやりの気持ちを、荷物を並べる作業を通して自然と体験していて、もうどっぷりフローレンスです。
夢を持つ2人が出会い、ひかれ合い、一緒に住み、そして……。
この先どうなっていくのかは、伏せておきますね。
プレイすることで得られる「フローレンス体験」
表現しにくい思考や感覚を、形にして、それを体験させる。これをすごく上手に、ステキに、実現してくれたのが『Florence』でした。
それによって、読むだけや見るだけでは到達できない領域の“体験”へ、プレイする人を導いてくれます。だからこそ、感じるものも大きくて、グッと心に残ります。
隠し要素があったり、ストーリーが分岐したりするわけではないので、ぜひゲーム的な思考を捨てて純粋な気持ちで「フローレンス体験」をしてください。
エンディングまでは約1時間で、時間としてもストーリーとしても「もう終わり?」と思ってしまうくらい、あっという間の体験でしたよ。
それではみなさん、よいインディーライフを!
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