あざやかに復活した『ポケットモンスター 金・銀』! 数々の名場面や今だからこそ語れる話が満載! 時を経ても新鮮な「面白さ」の本質に迫る![Vol.4]

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こんにちは。ポケモン公式ガイドブック著者の元宮秀介です。
今回は、『ポケットモンスター』シリーズの公式ガイドブックの制作エピソードから、『ポケットモンスター 金・銀』の魅力を語ろうと思います。
実は、僕がポケモンの公式ガイドブックを制作したのは、『ポケットモンスター 金・銀』(1999年)が最初なのでした。

『ポケットモンスター 金&銀 ポケモン図鑑完成ガイド』(メディアファクトリー/2000年)

1999年当時、僕は編集長として、ポケモンカードゲームの公式マガジン『ポケモンカードトレーナーズ』を制作する忙しい日々を過ごしていました。
そこへ舞い込んできたが、『ポケットモンスター 金・銀』の公式ガイドブックの仕事です。
ビデオゲームの『ポケットモンスター』と、トレーディングカードゲームのポケモンカードゲームの公式ガイドブックを同時につくる。
それは何よりうれしいことでしたが、何よりプレッシャーでした。
重圧をはねのけるには、不安要素をていねいに取り除くことがいちばんです。
『ポケモン 金・銀』の公式ガイドブックの制作においては、ゲームをとことん遊び尽くして、極めるしかありません。僕は『ポケモン 金・銀』の公式ガイドブックの制作を始めるにあたり、249種類のポケモンを手に入れて、ポケモン図鑑を完成させることにしたのです。

僕が最初に行ったのは、ゲームの資料を加工して、自分だけの図鑑完成ガイドをつくることでした。「進化させて入手するポケモン」、「なつき具合を上げて進化させるポケモン」、「タマゴを発見して入手するポケモン」というふうに、ポケモンの入手方法別の資料をつくったのです。

ポケモンを捕まえていく中で、僕はとてつもない衝撃を受けることになります。そのきっかけは、「道路」にありました。

『ポケットモンスター』シリーズは、ゲームのジャンルでは「RPG(ロールプレイングゲーム)」に分類されます。『ポケモン 赤・緑』以前のRPGは、ファンタジーの世界観が主流で、城や村、街の間のエリアは、草原や荒野などで表現されていました。その定番ともいえる手法に、新たな表現を持ち込んだのが、『ポケモン 赤・緑』でした。時代設定を現代にした『ポケモン 赤・緑』では、街と街の間は、道路で結ばれています。洞窟や海などもあります。つまり『ポケットモンスター』シリーズは、「私たちの暮らす世界」により近い世界観を提示したのです。

※現代を舞台にしたRPGの先駆的な作品として、『MOTHER』(1989年)と『MOTHER2』(1994年)などがあります。

RPGの定番として、スタート地点の街や村に隣接したエリアには、基本的には弱いモンスターが出現します。プレイヤーは、主人公のキャラクターを操作しながら、スタート地点の周辺エリアで弱いモンスターを倒し、経験値とお金を稼ぎます。やがて強く成長し、武器や防具をそろえたら、遠くの土地へと旅立ちます。
プレイヤーがさらに強くなると、飛行の技法を習得し、スタート地点へ立ち寄る場合は瞬時に戻れるようになります。つまり、ゲームプレイが進むにつれ、スタート地点の周辺エリアは、忘れ去られた存在になっていくのです。

『ポケモン 金・銀』には、忘れ去られる道路はありません。『ポケモン 金・銀』の道路には、その道路にしか出現しないポケモンが存在するからです。すべてではありませんが、多くの道路にそのような仕掛けが込められていたのです。例えば、ヤンヤンマは35番道路にしか出現しません。ブルーも38番道路だけに出現します

『ポケットモンスター』シリーズでは、すべての種類のポケモンに、独特の性質が与えられています。一見地味と思われがちなポケモンでも、必ず存在意義があります。

例えば、冒険の出発点となるワカバタウンに隣接した29番道路にも、存在意義が与えられています。オタチはジョウト地方では29番道路にしか出現しません。殿堂入りを果たして、ポケモン図鑑を完成させる旅に出ると、おなじみの29番道路がとたんに輝いて見えるのです。ノコッチとソーナンスは、くらやみのほらあなにしか生息していません。この事実を知ると、単なる洞窟と思い込んでいた場所でも、かけがえのない存在に思えてきます。

この構造に気付いた瞬間、僕は「ここにはゲームの神がいる」と確信しました。
まったく大げさではありません。このゲームは、主役のポケモンだけではなく、通り過ぎる道路にさえも、深い存在意義を与えているのですから。
ポケモンの世界では、すべてに存在する意味がある
そんな声がどこからか聞こえてくるようでした。

ポケモンカードゲームの公式マガジンの編集長業務と、『ポケモン 金・銀』の公式ガイドブックの制作を平行して進め、プレッシャーに押しつぶされそうになっていた僕も、『ポケモン 金・銀』に励まされるような思いがしました。

『ポケットモンスター 金&銀 ポケモン図鑑完成ガイド』(メディアファクトリー)より

そこで僕は、『ポケモン 金・銀』のポケモン図鑑の本では、道路や洞窟ごとに1ページをさいて、マップと出現表を配置し、そこにお得な情報を書き加えるレイアウトを編み出しました。

『ポケモン 金・銀』は、僕のものづくりの原点となったソフトです。以前にも何冊か攻略本を書いてはいましたが、ゲームが発信するメッセージを深く理解し、それに見合ったレイアウトを生み出すことは、『ポケモン 金・銀』から学んだことでした。

『ポケットモンスター 金・銀』
このタイトルを耳にするたびに、僕はいつでも初心にかえることができます。

それでは、また次回お会いしましょう!

[Vol.3]のマニアッククイズの答え
【クイズ1】ヒマナッツ
【クイズ2】金色
【クイズ3】タイムカプセル

©1995,1999 Nintendo/Creatures inc./GAME FREAK inc.
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