「Hello! インディー」第23回 ネコによって描かれる、ヒトのリアルな感情『ナイト・イン・ザ・ウッズ (Night in the Woods)』

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Hello! SOEJIMAです。
今日はかわいくてポップな動物たちの見た目とは裏腹に、リアルなテーマが描かれている物語『ナイト・イン・ザ・ウッズ (Night in the Woods)』をご紹介します。

まずは「Indie World 2018.12.27」でご紹介した際の映像をご覧ください。

とある小さな田舎町の物語

このゲームの主人公「メイ」は、大学を中退し、故郷の田舎町:ポッサム・スプリングに戻ってきた20歳の女の子。かつて鉱山によって栄えていた故郷は、今では産業と共に衰退の一途をたどるばかり。さびれた廃工場に、シャッターだらけのショッピングモール、不景気で仕事につくのも難しければ、賃金も上がらない……。

そんな閉塞感漂う田舎町で今も相変わらず生活している、昔からの友人たちとの日々が描かれます。友人たちと、たわいもない話をしたり、バンドをしたり、いたずらをしたり……。でも、昔と変わらずというわけにはいきません。

友人たちはそれぞれ、重く現実的な問題を抱えています。そしてメイ自身も。
あなたはこのゲームを通じて、これらの問題に向き合っていくことになります。
そして、町のはずれで起きた、とある失踪事件をきっかけに、この町の大きな闇に巻き込まれていくのですが……。

どこかで重ね合わせてしまう、彼らの等身大の悩み

ゲーム自体は、キャラクターとの会話主体で進行する2Dアドベンチャーです。
大学も辞めてしまい、仕事にもついていないメイの一日は、自由気まま。起きて、町を散策して、友人と遊んで、家族と話をして、寝る、という日々の繰り返し。
そしてこの繰り返しの日常に描かれる、友人や家族との何気ない「会話」そのものこそ、このゲームの魅力になります。

ここから少しだけSOEJIMAが心に残ったキャラクターを紹介しますが、ネタバレになりますのでご注意ください。

自分が心に残ったキャラクターが、メイの親友のひとり「ビー」。
彼女は高校生の時に、母親をガンで失っています。医療費が大きな負担となり、住んでいた一軒家も売り払わざるをえなくなります。家も妻も失った父親は病んでしまい、働くことができなくなり、ビーは家業を継がなくてはいけなくなります。
でも、成績優秀だったビーの本当の望みは、大学への進学。彼女はその夢を諦めなければいけなくなります。
そんなビーと、彼女の夢でもあった大学を自ら中退したメイとの衝突のシーンは、このゲームの1つのハイライトかもしれません。決して答えなどなければ、救いもない、2人の葛藤が描かれていて、胸が苦しくなります。

もう1人、心に残ったキャラクターがいます。それはメイのお母さん。
そもそも、なぜメイは大学を辞めてしまったのか?
両親は一人娘のメイをとても愛し、期待していました。家系として初めて大学への進学を果たすことになったメイ。そんな我が娘の為に、身を粉にして働いて貯めてきた学費。でも実際は、家計は破綻寸前で家のローンも払えない状況に陥っていました。そんな中の突然のメイの決断に対して、親としてどんな言葉をかけるべきなのだろうか
2人は仲が悪いわけではない、でも理由が聞き出せない、という微妙な距離感。そして、それが少しずつ縮まっていく……。

複雑に絡みあう感情のやり取りに、なんて感想を述べたら良いのかわかりませんでした。
ただ1つ言えることは、こうしたテーマを描いたゲームはこれまでに見たことが無かった

素晴らしいローカライズ、そして賛否分かれる終盤の展開

何よりも、この世界観へ没入させてくれたのがローカライズの質の高さです。素晴らしい日本語翻訳によって、微妙な心情のニュアンスなども損なわれることなく表現されています。おかげで、キャラクターが動物の見た目でどんなに可愛くても、台詞の内容がリアルすぎるので、実在する誰かに見えてきます

名台詞ならぬ、メイ台詞をお楽しみに。

台詞だけではなく、こうした日記のイラストもしっかりローカライズされていますよ。

そして終盤の展開については、恐らく賛否が分かれます。ここには記載することができませんが、ある人にとっては納得のいかないものかもしれません。
ですが、それを差し引いても全体を通して描かれるキャラクターたちの感情や悩みに、きっとどこかで共感し、終えた後に何かを考えさせてくれるでしょう。

『ナイト・イン・ザ・ウッズ (Night in the Woods)』は3月28日発売です。

それではみなさん、よいインディーライフを。

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