開発者が語る『Ever Oasis』の世界 Vol.3

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みなさん、こんにちは。
『Ever Oasis』 、プロデューサー兼ディレクターの株式会社グレッゾ石井浩一です。

ゴールデンウィークは、いかがお過ごしだったでしょうか?
私は旅、…ではなく、開発がひと段落つき、気持ちとしては人混みや渋滞を避けたい心境でしたので、自宅で、まったりとくつろぎながら、たまに犬たちに遊んでもらっていました。
(トイプードル♀のココと、ヨークシャーテリア♂のナツ)

もう少し時間ができたら、またハイラル王国に旅に出るのも良いかもしれませんね。

さて、第2回は「キャラクター」についてお話ししましたが、第3回はヴィストラーダの「世界」が、どんな風にできていったかについてお話しします。

新しい世界の作り方

私はゲームをつくる時は、いつも世界設定づくりから始めます。例えば、ファンタジーのゲーム世界を作る時には……

● 世界は惑星なのか?
● 惑星を構成する元素の概念は?
● その元素による気候や地域性はどうなのか?
● そこに生息している生き物は?
● 人間や亜人種はいるのか?
● それらはどのように生きているのか?
● 種族ごとの性格や特徴は?
● 道具はどういうものを用いているのか?
● 時代の流れにより、どう変化していくのか?

……など、いろんな視点から、関係性を考えながら、ワールドマップを絵として描いていきます。

「最初からこんなに細かく考える必要があるのか?」と感じる人もいるかもしれません。ゲームの機能としては目に見えた形で実装されない物もたくさんありますので。
ただ、こうして考えた設定は、ゲーム中のキャラクターとのふとした会話や、手に入るアイテムの説得力としてにじみ出てきたり、ゲームの中で集めた情報が少しずつ結びついて、世界を想像させる余地として膨らんでいくので、私はとても大事なことだと考えています。

「Ever Oasis」の場合は、『エジプシャンファンタジー』として、砂漠の世界を舞台にするというのが構想の起点でした。

● 元は、どういう世界だったのか?
● 精霊力が弱まることで砂漠化したのか?
● 何が原因で、精霊力が弱まったのか?
● それは、世界の理と関係性があるのか?

というように推測しながら設定を構築していきました。
すべての設定をキャラクターにしゃべらせるようなことはしていませんが、設定の断片から、裏にある世界の設定や歴史も想像しながら楽しんでいただければと思います。

図:スケッチメモ(石井)

世界設定に命を吹き込む

世界設定が固まってきてからは、アート班も加わって、コンセプトアートをたくさん用意して、イメージを固めていきました。ヴィストラーダは砂漠の世界ですが、茶色い砂の地域、白い砂の地域、そして洞窟の中と、環境によって色んな見え方と魅力があります。

ヴィストラーダの世界は最初から砂漠だったわけではありません。かつてはたくさんのオアシスが栄え、緑豊かな時代がありました。しかし砂に覆われて、長い時間が経った今となっては、わずかな痕跡を残すのみ。上の画像左のコンセプトアートにある、大きなツボはそんな名残のひとつなのかもしれません。

青が基調色の鍾乳洞のような集落もあります。一見、川のように見える青い部分もよく見れば砂。かつては川が流れ、大海へと水が注がれていたのかもしれません。

新しく世界を作る時は、関わるみんなが、同じイメージを頭の中に思い描くことができるアートを作ることが不可欠です。しっかりとチームのみんなが同じヴィストラーダの世界を頭の中に思い描ける状態になってから、ゲームモデルが起こされていきました。

そして、こちらが実際にできあがった世界を、歩いてみた様子です。(新規公開です!)

折角の機会ですので、世界設定にコンセプトアートとして命を吹き込んでくれた2人からのコメントも掲載させていただきます。


◆ ヤスダ(CONCEPT ART LEAD):
石井さんの中に明確にある世界観をどこまで正確に絵に起こせるか。苦労した点はこれに尽きると思います。とても細かいこだわりで成り立っているため、背景モデラーも形を作るのに苦労していたと思います。アートチームはよく板挟みにあっていました(笑)。

オアシスは徐々に成長していきますが、同じものでもその段階に合わせてすべてアートを起こしています。ですのでその変化の過程にはこだわりがあるのでぜひ注目してほしいです。ハナミセやデコ草、シンボルオブジェなど、面白いデザインがたくさんあるので、ぜひ色々集めて違いを楽しんでいただければと思います。

フィールドやダンジョンに関しては、全てが砂漠の世界という大前提がある中で、いかにエリアごとの個性を出せるかが苦労しました。詳しくは言えませんが、冒険していて飽きないよう、後半に行けば行くほどはっちゃけたデザインが増えていきます。怒られるかなーとひやひやしながら描いていたのはいい思い出です。(ちゃんと世界設定を崩さないレベルで描いてます)
夜になるとガラッと雰囲気が変わるエリアもあります。野営地はそれぞれの種族の特徴をイメージした場所や建物になっているのでそれぞれ比べてもらえたらと思います。


◆ キクオカ(CONCEPT ART ):
『Ever Oasis』のアートワークでは、フィールドやダンジョンといったところはもちろん、商品や植物、ギミックといった細かいところまで、こだわって作っています。たったひとつの「もの」に対し、5~10個のアイディアを出し、どうしたら分かりやすいか、面白いかと苦労しました。

注視しないと通りすぎてしまうような「もの」達も、たまにはちょっと止まって見ていただけると嬉しいです。
キャラクターやハナミセもたくさんあるので、ぜひお気に入りを見つけて欲しいです。


寄り道をしよう

最近のゲームは効率良く進められることが期待される傾向にあります。地図を分かりやすく、クエストの目的地をはっきり見せ、ストレスないプレイを提供する。もちろん『Ever Oasis』も、迷わず進んでいくための機能は用意しています。

ただ、冒険の途中に空をながめたり、思いもしなかった場所に生えているサボテンなどを刈って素材を集めたり、オアシスを訪れた旅人たちの何気ない一言を聞いたりといった、直接クリアに関わりのないことも、すべてヴィストラーダの世界を楽しむことにつながっています。

ぜひゲームクリアまで最短ルートでつながれた道を歩くだけでなく、見たことがないアイテムを見つけ出したり、おねがいを聞いてナカマの意外な一面を見たりと、たっぷりと寄り道をして、砂漠の世界を楽しんでください。

では、また次回お会いしましょう。

4コマ:ヴィストラーダの日常②「エビオのおねがい」

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