学研さんと「加速度センサー」のヒミツについて調べてみました。

  • この記事をシェアする

Nintendo Switchにはゲームをより楽しむために「モーションセンサー」という技術が入っているのを知っていますか?これは『ARMS』というNintendo Switchソフトの映像です。

手を前に突き出してパンチ!手をひねってパンチをカーブ!手の動きに合わせてゲームの中のキャラクターが、まるで自分と一体になったかのように、いきいきと動いていますね。

このように「モーションセンサー」は自分の手の動きをゲームの中に伝えることができる優れものなのです。では「モーションセンサー」はどのような仕組みで、わたしたちの手の動きをゲームの中に伝えているのでしょうか?

そこで「HD振動」に引き続き、再び学研さんと一緒に、「モーションセンサー」について色々と調べてみることにしました!Nintendo Switchのモーション センサーは「加速度センサー」と「ジャイロセンサー」という2つのセンサーを組み合わせたものが使われているのですが、今回は「加速度センサー」について、くわしくみていくことにしましょう。

加速度って?

加速度センサーの「加速度」とは一体何でしょうか?「加速」という言葉は聞いたことがあっても、「加速度」という言葉はあまり聞いたことがないのではないでしょうか? 加速度というのは、スピードの上がり方や下がり方、つまりスピードの変化を示す言葉……といってもなんだかわかりませんね……そこで、こんな装置を用意してみました。坂道の上からビー玉をコロコロ転がした時のビー玉の動きを観察して、加速度がどんなものかを確認してみましょう。

少しずつスピードアップしながら坂の下に転がり落ちていきました。ビー玉が止まっている(=スピードがゼロ)の状態から、どんどんスピードが上がっていったのが分かりますね。「加速度」というのは、このようにスピードに変化が起こる時に発生するものなのです。スピードの変化が大きいほど「加速度が大きい」なんて言ったりします。

わかりましたか?では、ここで理解度を確かめるクイズをやってみましょう。

赤信号から青信号に変わって車が動き出す時、加速度が大きいのは次のうちどちらの車でしょう?
① ゆっくり動き出す車
② 猛スピードで急発進する車

正解はここを押してね!

ということで、ビー玉や車など、モノが動き出す時は「加速度」が発生するということを覚えておいてくださいね。

加速度センサーのはたらき

モノが動けば「加速度」が生まれるということは、逆に言うと「加速度」のことをよく調べれば、モノがどう動いたのか?がわかるということになります。

加速度センサーはその名の通り「加速度」を調べることで、物体がどんな方向に、どれくらい動いたのか?ということを調べることができる機械なのです。『ARMS』のパンチの動きがわかるのは、加速度センサーが手に発生した加速度を調べてくれていたからなんですね!

では、加速度センサーはいったいどんな仕組みで加速度を測り、物体の動きを調べているのでしょうか?

そのヒントになるのが、先ほどのクイズに出てきた車です。

もしみなさんが先ほどの猛スピードで急発進する車に乗っていたら、どうなるか想像してください。猛スピードで車が動き出したら、自分の体が後ろの方にグッっと押し付けられる感じがするんじゃないでしょうか?つまり車の動きと反対側に体を押し付けるような動きが発生しているようですね。

実はこれが加速度センサーの原理に深く関係しています。どういうことなのか、このあとくわしく見ていくことにしましょう。

加速度センサーのしくみ

では、加速度センサーのしくみについて見ていきましょう。Joy-Conに入っている加速度センサーはこんな形をしています。







ジャジャーン!この指の上に載っているとても小さな機械の中に「加速度センサー」が入っています。でも、これだと小さすぎてよくわからないので、こんなものを用意しました。

ジャジャーン!「加速度ミエール君」です!

ものすごくアヤシイ装置ですが、じつはこれ、加速度センサーの仕組みをわかりやすく確認するために、加速度センサーの中身を巨大化した装置なのです。

え?信じられない?

いやいや、こう見えても本物の加速度センサーと同じようにどちらの方向に動いたかが分かるようになっているのです。実際に「加速度ミエール君」を動かして確かめてみましょう。

映像を見て分かるように、に動かすと前側のライトが点灯し、後ろに動かすと後ろ側のライトが点灯するというように、動かした方向と同じライトが一瞬光ることがわかりますね。

なぜこのようにライトが光るのでしょうか?
装置の真ん中あたりをよくみてみると、四角いパーツがあって、4つの角(かど)がバネでつながっていることがわかります。

この四角いパーツのところは「可動部(かどうぶ)」といいます。バネでつながっているだけなので、手で振動をあたえると簡単に動くようになっています。そして、可動部がある程度動くと、動いた方向と反対側のライトが光るようになっています。
ライトが光った時の可動部の様子をよく見てください。「加速度ミエール君」を動かした方向とは反対側に動いています。

さきほど、猛スピードで車が動き出したら、進行方向とは反対側に押し付けられる様な力が発生するというはなしをしましたが、「加速度ミエール君」でもそれと全く同じことが起こって、「加速度ミエール君」の中にある可動部が進行方向とは反対側に動いているのです。

まとめるとこのようになりますね。

Joy-Conで使われている本物の加速度センサーにも可動部があり、「加速度ミエール君」と同じように動いた方向と反対側に可動部が動くようになっています。ただし、「加速度ミエール君」のようにライトが点灯するわけではなく、「可動部が動いた方向と反対側にJoy-Conが動いた」という情報をゲームの中に送っています。『ARMS』ではその情報を受け取って、キャラクターが動いているというわけなのです。

加速度センサーとパンチの関係

加速度センサーの仕組みについて説明してきましたが、実際に『ARMS』のパンチの動きをしたとき、加速度センサーがどのような動きをするのかを、こちらの装置で実験して確認したいと思います。

ジャジャーン

またまたアヤシイ装置が出てきたけど、これはパンチの動きと加速度の関係を観察しやすくするために、先ほどの「加速度ミエール君」をすこし小さくしたもの、その名も「加速度ミエール君・ハンディ」です。中央に可動部があり、動いた方向のライトが光るなど、基本的な構造は先ほどの「加速度ミエール君」と全く同じです。

この装置を手につけて、パンチをしたとき、「加速度ミエール君・ハンディ」がどのようになるのかを見てみましょう。

手を突き出している最中、パンチの方向に赤いライトが光っていることがわかりますね。スロー映像を確認してみると、可動部がパンチの動きに合わせて後ろ側に下がっています。

Joy-Conの中にある本物の加速度センサーでも、これと同じようにパンチの動きに合わせて可動部が動いており、その動きをしらべることで「いまパンチをした!」ということが分かるようになっています。

また、よく見ると、パンチの最後に反対側の青いライトも光っていますね。その理由は、パンチが終わり、手の動きのスピードが急に下がったからです。先ほど加速度とは「スピードに変化が起こる時に発生するもの」と説明しましたが、加速度はスピードが上がるときだけではなく、スピードが下がるときにも発生するのです。そのため、パンチの手を止めたときにも可動部が動き、反対側の青いライトが光ったというわけなのです。

加速度センサーの弱点

「加速度ミエール君」の実験で、加速度センサーはパンチの動きなどを調べることができることがわかりましたね。
ところで、『ARMS』ではパンチのときに少し手を回転させると、曲がるパンチをうつことができます。

この回転の動きはどのようにゲームの中に伝えているのでしょうか?パンチと同じように加速度センサーのおかげなのでしょうか?
さっそく「加速度ミエール君」をつかって、加速度センサーを回転させた時の動きを調べてみましょう

映像を見て分かるように、可動部が全く動いていませんね。加速度センサーは可動部の動きによって、モノの動きを調べていると説明しましたが、今回の場合、可動部が動かないので、動きを調べることができません。

このことから加速度センサーはパンチのようなまっすぐな動きは調べることは得意ですが、回転の動きを調べることはできない!ということがわかります。

では、『ARMS』ではどのようにして、手の回転をゲームの中に伝えているのでしょうか?

そこで登場するのが、もう一つのセンサー。その名も「ジャイロセンサー」なのです。
次回はこの「ジャイロセンサー」についてくわしくしらべていきましょう。

それでは、また次回!

※「加速度ミエール君」に関するおことわり

今回は説明を簡単にするため、前後・左右の動きのみを確認できる装置を作成しましたが、Nintendo Switchの中に入っている実際の加速度センサーは、前後・左右に加えて、上下方向の動きも検知できるような作りになっています。

edited by : 編集部 Norome
  • この記事をシェアする
この記事のほかにも、こんな記事があります。